ナショナルコンポジットセンター(National Composites Center Japan; NCC)は名古屋大学内に設置された,産学連携研究を行う全学センターです.研究の対象は先進複合材料(advanced composite materials)と呼ばれる複合材料です.複合材料とは,複数の素材を組み合わせることによって優れた材料特性を実現した材料で,特に炭素繊維を用いて樹脂を強化した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は軽く,強く,耐久性に優れており,自動車,航空機などの輸送機器や風車などのエネルギー機器の構造材料として適しています. NCCは産学連携研究によって先進複合材料の社会実装を進め,省エネルギー,環境負荷の低減に寄与することを目指しています.
NCCは2012年4月に開設され,2014年1月に名古屋大学全学センターに移行しました.2013年度から2022年度までは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および新構造材料技術研究組合(ISMA)による委託研究事業により,熱可塑性CFRP(CFRTP)を用いた量産自動車の軽量車体構造の研究開発プロジェクトを推進しました.この一環としてNCCでは世界有数のCFRTP油圧プレス成形装置を導入し,これを用いた独自のLFT-D高速成形技術,およびその評価技術を産学連携研究によって開発してきました.
2023年度からは,これまで培った技術,産学連携のネットワークを活かし,CFRPの資源循環を実現すべく, リサイクル炭素繊維を擬似連続化して航空機等の構造材料として再使用するプロジェクト,および自動車の廃プラスチックを再生し,車体構造へ再使用(アップサイクル)するプロジェクトに取り組んでおります.
また,NCCではこれと並行して,企業,公的研究機関,自治体,大学など約100団体からなる「次世代複合材研究会」を運営し,複合材料関連の活発な情報交換を行うとともに,技術交流の中から個々のシーズと企業ニーズとのマッチングを図り,当該分野の発展に大きく貢献しています.さらに,金沢工業大学Innovative Composite Center (ICC),岐阜大学 Guコンポジット研究センター (Gu Composites Center ;GCC)および公設試と連携し,コンポジットハイウェイコンソーシアムというコンソーシアムを組織し,技術シーズ集等の作成を通じて,先進複合材料技術の裾野の拡大を図っています.
これからも名古屋大学NCCは素材から設計・製造・成形加工,応用までの縦のつながり,化学,物理,材料,電気,機械,航空,環境,エネルギーなどの学際的な大学あるいは研究機関との横のつながりを強化し,人材育成,産官学連携,コンソーシアムの構築,海外の研究機関との国際連携も交えて, 複合材料分野における世界的な産学連携研究開発拠点を目指すべく活動してまいります.このWebページを閲覧された方で,もしNCCの活動にご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら,ぜひ研究へのご参加,ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします.
名古屋大学ナショナルコンポジットセンター センター長 吉村 彰記